5月になり、入園からひと月が経ちました。新型コロナウィルスの感染拡大により子どもたちの登園状況は様々ですが、新入園児の中には保育園での生活に慣れ、安心して過ごす姿も見られるようになってきました。
毎年この時期になると思い起こすのが東京大学先端科学技術研究センター准教授で小児科医である熊谷晋一朗さんの「自立とは依存先を増やすこと」という言葉です。脳性まひによる障害を抱えた熊谷さんは大学進学をきっかけに一人暮らしを始め、それまでは母親だけが頼りだったのですが、多くの友だちやヘルパーさんなど広くサポートを受けて生活するようになりました。この経験を通して「依存しないこと」が「自立」ではなく「依存先を増やすこと」が「自立」であると考えるようになったそうです。
4月、入園したての子どもはおうちの方と離れて知らない場所で知らない人に囲まれて過ごすので不安でいっぱいです。私たち保育者はそんな子どもたちが安心して過ごせるようにひとりひとりの欲求を読み取り、応え、信頼関係を築いていきます。今年はマスクをしての保育。表情では伝えられないけれど、五感が敏感な子どもたちに目で、タッチで、声で、応えていきました。
「欲求が伝わっているみたい」「いつでもすぐそばで見守っていてくれるみたい」「悲しいとき、驚いたとき、痛いとき、おいしいとき、嬉しいとき、全部一緒に感じてくれるみたい」そう感じると、子どもたちは次第に安心して保育者から離れ遊び始めます。依存先がひとつ増えたのだな、と嬉しく思う瞬間です。
新型コロナウィルスによる緊急事態が続き、人とのつながりが一層希薄になりがちな今、親と子、一対一の育児は大変です。子どもには自分しか頼れる人がいない、という状況はとても息苦しいですね。YMCAは支えあい、分かち合うつながり「ポジティブネット」のある社会を目指しています。保護者の方にも保育園を信頼して保育園をひとつの「依存先」とし、子どもの成長の喜びを共に分かち合えるように努めていきたいと思います。
※熊谷さんは2016年度「第23回AIDS文化フォーラムin横浜」で講演をしてくださいました。その時の記録はhttp://abf-yokohama.org/houkokusyo/abfy2016.pdfでご覧になれます。よかったらどうぞ。
(YMCAマナ保育園 金子)